久しぶりに履こうと思って下駄箱から取り出したスニーカーに、白い綿のようなものや黒い点々が…。それ、カビです。でも慌てて水で洗い流したり、ゴシゴシこすったりするのはちょっと待ってください。
実は、カビの対処法を間違えると、汚れが広がったり、スニーカーを傷めてしまうこともあるんです。この記事では、カビを発見した瞬間から完全復活までの流れを、失敗例も交えながら丁寧に解説します。
お気に入りのスニーカーを諦める前に、ぜひ試してみてくださいね。
スニーカーにカビが生える3大原因
そもそも、なぜスニーカーにカビが生えてしまうのでしょうか。原因を知ることで、今後の予防にもつながります。
湿気がこもる保管環境
カビは湿度70%以上、温度20〜30℃の環境で活発に繁殖します。下駄箱は扉を閉めっぱなしにすることが多く、空気が循環しにくいため湿気がこもりがちです。
特に、履いたばかりの靴をすぐにしまってしまうと、汗や雨で湿ったスニーカーが下駄箱全体の湿度を上げてしまいます。
さらに玄関は外と直接つながっているため、雨の日や梅雨時期には外からの湿気も流れ込みやすいんです。古いタイプの玄関ドアは結露もしやすく、その水分が下駄箱に影響することもあります。
汚れをエサにするカビの生態
カビは栄養源がないと繁殖できません。スニーカーには、泥や砂、皮脂、汗などの汚れがたっぷりついています。これらがカビにとっては格好のエサになるわけですね。
特に注意したいのが、足の裏から出る汗です。1日履いた靴にはコップ1杯分もの汗が染み込んでいると言われています。素足で履くスニーカーは、より汚れや湿気を吸収しやすいため、カビのリスクも高まります。
季節と環境要因
梅雨時期は言うまでもなくカビの最盛期です。湿度が高く、気温も上がるこの時期は、カビにとって最高の環境になります。でも実は、冬も油断できないんですよ。
暖房を使う室内と冷たい玄関ドアの温度差によって結露が発生しやすく、その水分が下駄箱の湿度を上げることがあります。夏は高温多湿で、スニーカー内部に溜まった汗が乾きにくくなりがちです。つまり、1年を通してカビのリスクは常にあるということですね。
カビを発見した瞬間にすべき3つの応急処置【重要】
カビを見つけたとき、最初の対応を間違えると後々厄介なことになります。正しい初動対応を覚えておきましょう。
絶対にNGな初動対応
まず、やってはいけないことを押さえておきます。
室内でティッシュや布でカビを払い落とすのは厳禁です。
カビの胞子が部屋中に飛び散って、他の靴や衣類にも付着してしまいます。同じ理由で、室内で掃除機で吸い取るのもNGですよ。
いきなり水で洗い流すのも避けてください。
表面だけ濡らすと、カビ菌が繊維の奥に入り込んで、かえって繁殖しやすくなります。また、水で濡らすことで黒カビの色素が広がり、シミとして定着してしまうこともあるんです。
塩素系漂白剤を使うのも危険です。
確かに除菌力は強いですが、脱色作用が強すぎて、スニーカーの色が抜けてしまったり、素材が傷んで破れやすくなったりします。

カビの拡散を防ぐファーストステップ
カビを発見したら、まずは屋外やベランダに持ち出します。室内でカビの胞子を飛び散らせないためです。マスクとゴム手袋を着用して、自分の健康も守りましょう。
次に、乾いたブラシで表面のカビを軽く払い落とします。この時点では、無理にゴシゴシこする必要はありません。目に見える表面のカビを取り除くだけで十分です。使ったブラシは後でアルコール除菌スプレーで消毒しておいてくださいね。
靴紐がある場合は外しておきます。靴紐にもカビ菌が付着している可能性があるので、別途洗浄が必要です。
レベル診断で最適な対処法を見極める
カビの状態を見て、どのレベルの対処が必要か判断しましょう。
軽度カビ:
表面にうっすらと白いカビが付いている程度。ティッシュやブラシで簡単に取れそうなレベルです。この場合はアルコール除菌で対処できます。
中度カビ:
白カビが全体に広がっている、または黒カビが点状にいくつか見られる状態。繊維の奥までカビ菌が入り込んでいる可能性があるため、つけおき洗いが必要です。
重度カビ:
黒カビが広範囲に広がっている、または悪臭がひどい場合。自力での完全除去が難しく、プロのクリーニングを検討すべき状態です。
スニーカーのカビ取り実践マニュアル【レベル別】
それでは、カビのレベルに応じた具体的な対処法を見ていきましょう。
軽度カビ(表面の白カビ):アルコール除菌で対処
表面だけに白カビがついている場合は、比較的簡単に対処できます。
必要なもの
- 消毒用アルコールスプレー(エタノール濃度70%以上)
- きれいな布(マイクロファイバークロスなど)2〜3枚
- ブラシ(使い捨てでもOK)
- マスク、ゴム手袋
手順
- 屋外でブラシを使い、表面のカビを軽く払い落とします
- きれいな布にアルコールスプレーを吹きかけます(直接スニーカーに吹きかけると素材が傷む可能性があります)
- 布でカビがあった部分を優しく拭き取ります
- 別のきれいな布にアルコールをつけて、スニーカー全体を拭きます
- 靴の内側にもアルコールスプレーを吹きかけて除菌します
- 風通しの良い場所で陰干しし、完全に乾かします
ポイント:アルコールは揮発性が高いため、比較的早く乾きます。ただし革製スニーカーの場合は、色落ちする可能性があるので、目立たない部分で試してから全体に使ってください。
中度カビ(全体の白カビ・点状の黒カビ):つけおき洗いで徹底除去
カビが広がっている、または黒カビが見られる場合は、つけおき洗いでしっかり除菌します。
必要なもの
- 酸素系漂白剤(オキシクリーンなど)
- 重曹
- 布団用圧縮袋または大きなバケツ
- 靴洗い用ブラシ
- ゴム手袋、マスク
- タオル、新聞紙
手順
- 屋外でブラシを使い、泥などの大まかな汚れを落とします(カビは落とさなくてOK)
- 靴紐を外して別途つけおきします
- 布団用圧縮袋(またはバケツ)にスニーカーを入れます
- 40〜50℃のぬるま湯を入れます(水1Lあたり)
- 重曹と酸素系漂白剤を各大さじ2ずつ加えて溶かします
- スニーカー全体が浸かるようにして、2〜6時間放置します
つけおき時間の目安
- 軽い白カビ:2〜3時間
- 全体の白カビ:4〜6時間
- 点状の黒カビ:6時間〜一晩
- 汚れが目立つ部分をブラシでこすります
- きれいな水でしっかりすすぎます(洗剤が残るとカビ再発の原因になります)
- 洗濯機で1〜2分脱水します
- 形を整えて、風通しの良い場所で陰干しします
ポイント:
布団用圧縮袋を使うと、バケツよりもスニーカー全体をしっかり浸せます。100円ショップで買えるので経済的ですよ。重曹は酸性の汚れを中和し、酸素系漂白剤は除菌・消臭効果があるため、2つを組み合わせることで相乗効果が期待できるんです。
重度カビ(広範囲の黒カビ):プロ依頼の判断基準
以下のような状態の場合は、プロのクリーニングを検討しましょう。
プロに頼むべきサイン
- 黒カビが広範囲に広がっている
- つけおき洗いをしても黒いシミが残る
- カビの悪臭が取れない
- 革製やスエード素材で、自分で洗うのが不安
- ハイブランドのスニーカーで失敗したくない
プロのクリーニングでは、エチレンオキサイドガス滅菌など、家庭ではできない本格的な除菌処理を行ってくれます。料金は1足2,000〜5,000円程度が相場です。大切なスニーカーなら、無理せず専門家に任せる選択肢もありますよ。
素材別カビ取りの注意点
スニーカーの素材によって、カビ取りのアプローチを変える必要があります。
布製スニーカー(キャンバス・メッシュ)
キャンバス地やメッシュ素材は、基本的に水洗いOKです。前述のつけおき洗いが効果的ですね。
ただし、複数の素材が組み合わさっているスニーカーや、装飾がついているものは、洗濯表示を必ず確認してください。
洗った後は、天日干しも可能ですが、長時間直射日光に当てると色褪せの原因になります。
2〜3時間程度の天日干しにして、その後は陰干しに切り替えるのがおすすめです。
革製スニーカー
本革は水に弱いため、基本的に丸洗いはNGです。軽度カビの対処法で紹介したアルコール除菌で対応しましょう。
カビ取り後は、革専用の保湿クリームでケアすることをおすすめします。アルコールで革が乾燥しているので、クリームで潤いを与えることでひび割れを防げます。
月に1回程度、馬毛ブラシでブラッシングして、革靴用クリームで磨き上げると、カビ予防にもなりますよ。
スエード・起毛素材
スエードは特にデリケートな素材です。水に濡れるとシミになりやすいため、丸洗いは避けてください。
スエード専用のブラシで毛並みを整えながらカビを払い落とし、その後アルコール除菌スプレーを布につけて拭き取ります。直接スプレーすると色ムラになることがあるので、必ず布を介してくださいね。
カビ取り後は、スエード専用の防水スプレーを使うことで、今後のカビ予防になります。
カビ取り後の「完全乾燥」が再発を防ぐカギ
実は、カビ取りそのものよりも、その後の乾燥が重要なんです。
生乾きが招く再発リスク
せっかくカビを取っても、生乾きのまま下駄箱にしまってしまうと、残っていたカビ菌が再び繁殖してしまいます。特に内側やソールの裏側など、見えにくい部分に水分が残りがちです。
生乾きのスニーカーは独特の臭いもしますよね。あの臭いは雑菌が繁殖しているサインでもあります。つまり、カビも繁殖しやすい状態ということなんです。
確実に乾かす3つのチェックポイント
完全に乾いたかどうかを確認する方法をご紹介します。
1. 重さをチェック 乾く前と比べて、明らかに軽くなっているはずです。まだ重みを感じる場合は、内部に水分が残っています。
2. 触感をチェック スニーカーの内側、特につま先部分や中敷きの下を触ってみてください。ひんやりした感触や湿った感じがあれば、まだ乾いていません。
3. 臭いをチェック 鼻を近づけて臭いを嗅いでみましょう。洗剤の香りだけでなく、生乾き特有のツンとした臭いがないか確認します。
季節別の乾燥時間目安
春・秋(晴天時):1〜2日
梅雨時期:3〜5日(除湿機や扇風機の併用を推奨)
夏:晴天なら半日〜1日、曇りや室内干しなら2〜3日
冬:2〜4日(暖房の効いた部屋で干すと早い)
乾燥を早めたい場合は、靴の中に丸めた新聞紙を詰めると効果的です。新聞紙は吸湿性が高いため、2〜3時間おきに交換することでかなり早く乾きますよ。ドライヤーを使う場合は、熱風を長時間当てると接着剤が溶けたり素材が傷んだりするので、冷風か弱温風で短時間使用にとどめましょう。
【失敗しない】よくあるミスとリカバリー方法
カビ取りで失敗してしまった時の対処法も知っておくと安心です。
色落ち・変色してしまった場合
原因:塩素系漂白剤を使った、または酸素系漂白剤でも濃度が高すぎた、つけおき時間が長すぎた
対処法
- 軽度の色落ちなら、スニーカー用の補色スプレーで目立たなくできます
- 全体的に色が抜けた場合は、布用染料で染め直す方法もあります(ただし元の色に戻すのは難しいです)
- ハイブランドのスニーカーなら、メーカーのリペアサービスを利用するのも手です
予防策:必ず酸素系漂白剤を使い、規定量を守る。色柄物は目立たない部分でテストしてから全体に使いましょう。
カビのシミが残ってしまった場合
原因:黒カビが繊維の奥深くまで入り込んでいた、つけおき時間が短かった
対処法
- もう一度つけおき洗いを試す(今度は一晩つけおき)
- 漂白効果のある日光に当てる(ただし色褪せリスクもあるので2〜3時間程度)
- それでもダメならプロのクリーニングを検討
予防策:カビを発見したらできるだけ早く対処する。時間が経つほど黒カビは根を張ります。
臭いが取れない場合
原因:カビ菌が完全に死滅していない、またはカビ以外の雑菌も繁殖している
対処法
- 重曹水スプレー(水100mlに重曹小さじ1)を作って、内側にスプレーして乾かす
- コーヒーの出がらしや活性炭を入れた袋を靴の中に入れて一晩置く
- 靴用の消臭・除菌スプレーを使う
予防策:つけおき洗いの後のすすぎをしっかり行う。洗剤が残ると雑菌の温床になります。
二度とカビを生やさない!季節別予防カレンダー
カビを完全に取り除いたら、もう二度と生やさないための予防策を習慣化しましょう。
春・秋:基本の予防習慣
比較的湿度が安定している季節ですが、油断は禁物です。
履いた後の習慣
- 帰宅したらすぐに下駄箱にしまわず、2〜3時間は玄関で陰干し
- ブラシで軽く泥やホコリを払い落とす
- 週に1回は下駄箱の扉を開けて換気
月に1回のメンテナンス
- 履いていないスニーカーも取り出して陰干し
- 下駄箱の除湿剤を交換
- 下駄箱内を拭き掃除(アルコール除菌も効果的)
梅雨:最も注意が必要な時期の対策
湿度が80%を超える日も多く、カビにとって最高の環境になります。
毎日の習慣
- 履いたスニーカーは必ず陰干し、できれば扇風機で風を当てる
- 雨に濡れたスニーカーは新聞紙を詰めて、できるだけ早く乾かす
- 下駄箱の扉は少し開けておく(5〜10cm程度)
週に1回
- 下駄箱全体を換気(晴れた日に玄関ドアも開けて空気を入れ替える)
- 除湿剤の状態をチェック(満杯になったらすぐ交換)
おすすめアイテム
- 除湿機(小型のものでOK、玄関に置いておく)
- 珪藻土の靴用除湿シート
- 炭入りの脱臭・除湿剤
夏:高温多湿への対応
気温が高く、足汗も多くなる季節です。
履いた後の習慣
- 素足で履いたスニーカーは特に念入りに乾燥
- 汗をかいた日は除菌スプレーを内側に吹きかける
- できれば複数のスニーカーをローテーション(同じ靴を連日履かない)
2週間に1回
- つけおき洗いではなくても、軽く水洗い(汗や皮脂を落とす)
- 防水スプレーをかけ直す
冬:結露・暖房による湿気対策
寒いからといって油断していると、意外にカビが生えやすい季節です。
注意すべきポイント
- 暖房の効いた部屋と冷たい玄関の温度差で結露が発生
- 雪や雨で濡れたスニーカーが乾きにくい
対策
- 濡れたスニーカーは暖房の効いた部屋で乾かす(ただし直接暖房器具に当てない)
- 玄関ドアの結露をこまめに拭き取る
- 下駄箱に除湿剤を多めに入れる
100均グッズでできるカビ予防アイデア
最後に、コストをかけずにできる予防アイデアをご紹介します。
除湿に使える意外なアイテム
重曹 100均の容器に重曹を入れて、ガーゼで蓋をすれば簡易除湿剤の完成。靴の中にも入れられますよ。
珪藻土コースター 本来はコップの下に敷くものですが、靴箱の棚に置いておくと湿気を吸ってくれます。
新聞紙 丸めて靴の中に入れておくだけで、湿気と臭いを吸収。毎日交換すればより効果的です。
炭(竹炭・備長炭) 消臭と除湿の両方に効果あり。100均でも小袋入りのものが買えますよ。
保管に便利なプチプラグッズ
クリアシューズケース 透明なので中身が見えて便利。通気性のあるタイプを選べばカビ予防にもなります。
突っ張り棒 下駄箱に突っ張り棒を追加して、スニーカーを吊り下げ収納。空気の通りが良くなります。
S字フック 突っ張り棒とセットで使えば、靴を浮かせて保管できるので湿気がこもりにくいです。
ワイヤーネット 下駄箱の棚の下に敷いて、空気の流れを作る。湿気が下に溜まるのを防ぎます。
正しい知識でお気に入りのスニーカーを守ろう
スニーカーにカビが生えてしまったときは、まず慌てずにカビのレベルを見極めることが大切です。軽度ならアルコール除菌、中度ならつけおき洗い、重度ならプロに任せる。この判断ができれば、適切に対処できます。
そして何より重要なのが、カビ取り後の「完全乾燥」と「予防習慣」です。生乾きのまま保管すると再発のリスクが高まるため、重さ・触感・臭いの3点でしっかりチェックしましょう。
普段から履いた後の陰干し、下駄箱の換気、除湿剤の活用などを習慣化することで、カビのリスクはグッと下がります。梅雨時期は特に注意が必要ですが、実は冬の結露対策も見落としがちなポイントですよ。
カビは一度生えると完全に除去するのが難しくなります。でも、正しい知識と適切な対処法を知っていれば、お気に入りのスニーカーを長く愛用できるはずです。この記事が、あなたのスニーカーライフのお役に立てれば嬉しいです。
